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気がつくと、どろどろの土の上に寝そべっていて、頬が痛かった。

口の中も切れたらしく、血の味がした。

 

 

うひゃひゃひゃ。

 

 

複数の笑い声。

ようやく、パニッシュは複数の誰かが自分達を攻撃していることに気がついた。

 

 

“言葉”は使っていない。

ということは”変換者”ではない。

それならば考えられるのは盗賊。

 

 

 

なんとか、最後の力を振り絞り、起きあがった。

 

足が震えている。

 

視界の中に、倒れてもがいているレヒフェルトの姿が入ってきた。

 

 

レヒフェルトで逃げることはできない…。

 

 

 

お、立った、立った!!

 

 

 

さきほどから何度もバカにするような声にパニッシュはいらだった。

国を出たことがないパニッシュですら、今このままでいたら殺されてしまうことぐらいの教養はあった。

 

 

逃げなきゃ…。

 

 

恐ろしさと痛みに襲われながらも、パニッシュは持っている知識をフル回転させる。

 

 

相手を何かで油断させて、その間に森の中へ逃げれば…。

 

『何か』

 

パニッシュは城をでる際、自分の宝石箱の中からいくらか宝石を持ってきたことをおもいだした。

 

これできがひければ!!

 

ありったけの宝石を握り締め、地面へ叩きつけた。

 

「こ、これだけあれば十分でしょっっ!?!?」

 

 

お、なんだなんだ?

盗賊の一味はまるで犬がエサに食いつくかのように宝石に群がった。

 

こうでしか生きることができない人たちなんだわ。醜い…。

 

完全にやつらが夢中になっていることを見てから、パニッシュはかけだした。

しかし、それも簡単に防がれてしまうのだった。

 

 

「どこいくんだい、嬢ちゃん」

 

 

奴は、パニッシュの後ろにすぐに回り腕を取った。

そんな、後ろにいるなんて…!!

 

これで完全に道は塞がれ、とらわれ、どうすることもできない状況になった。

 

 

「宝石はもう渡したっていったでしょう!?離してよッ!!」

「ああん?それが人にものを頼む態度か?」

 

 

2人はにらみ合っている。

 

 

「ボス〜、そんなやつさっさと食っちゃいましょうよ。」

 

 

宝石を拾い終わってニヤニヤとした表情で、パニッシュを見る目は気味が悪かった。

 

 

「こいつぁ、どこかの王族だな。

 

 じゃなきゃ、あんなに宝石はもっちゃぁ、いない。」

 

パニッシュははっと気がついた。

逃げるためにやったことだったのできづかなかったのだろう。

今の状況では、宝石はかえってやっかいなものになってしまった。

 

 

心臓の鼓動が大きくなっていく。

 

 

そして、パニッシュはボスの手から軽々と仲間の一人に渡った。

 

「そいつを食べるなり、なにしてもいい。

 ただ、殺すな。そして、どこの王族か聞き出すんだ。」

 

 

な、なにをする気…?

 

 

真っ暗な森の中で、わずかに奴らの持っているランプで見えたのは、刃モノの光。

 

パニッシュは一瞬で体のしんから冷たいものが通りぬけるのがわかった。

 

 

「じゃぁ、早速どこから切り刻みましょうかぁ???」

「どこの王族なんだい?嬢ちゃん〜」

 

い、いや…。

 

しゃべろうと思っても思うようにしゃべれない。

 

 

「あらら。しゃべれないの??」

「じゃぁしゃべれるように、ここからきざみましょうか〜!!」

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

***

 

「おい!シン!!待てよ!」

やっとリチャードが追いついたようだ。

「こんな広い森の中で一回の馬の鳴き声だけで場所なんてわからねーよ。」

「いや、二回だ。絶対こっちの方向だ。」

 

シンのその自信はどこからくるものなのか、おせっかいにもほどがある。

しかし、ここまできてしまった以上、シンの勘に任せるしかない。

 

と、その時だった。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「こっちだ!!」

 

シンがわずかな方向修正をして、声がした方へ向かう。

 

まじかよ…。

 

リチャードは驚くばかりだった。

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