12

 

パニッシュは再び土の中へ倒れた。

 

 

パラパラパラ

 

 

降ってきたのは雨と、細い何か…。

 

 

 

意識はあった。

痛みもない。

 

 

そうだ。

 

 

切られたのは、

    ―――――私の髪。

 

 

 

 

「ねぇ、ミルア。

お母様ってどんな方ですの?」

 

「そうですねぇ、武術が長けていて、とても賢く、心優しい方ですわ。」

 

「それはしっているわ。馬術もとても優れていらっしゃるんでしょう?

だから、私も馬術武術を習っているのです。」

「フフ。そうでしたね」

 

 

ミルアはパニッシュの髪をとかしながら、笑った。

「そうですわ。奥様は髪がとても長い方です。

パニッシュ様の金の髪はお母様譲りですわ」

 

 

 

「本当?」

 

 

パニッシュがミルアを見上げた。

 

 

 

「えぇ。」

 

 

 

ミルアはにっこり微笑んだ。

 

 

 

 

パニッシュは母の姿をあまり知らなかった。

パニッシュの母は軍人で、当時行われていた変換者との戦争に進んで参加し、

 国の士気を高めていて立派だった、といわれている。

 

 

そして、最大の決戦ウェルヴェスの戦いで戦死した。

 

 

 

仕方のないことだった。

 

 

 

その戦いはネシリア王国との連合軍ででたにもかかわらず、軍はほぼ全滅。

 

 

不思議なことに、他のもの達の亡骸が戻ってくる一方で、彼女の亡骸は国へ戻ることはなかった。

その後、母の肖像画をいくつも見たが、彼女にとっての母はどれでもなかった。

 

 

だから彼女は母をあまり知らない。

 

 

その当時をパニッシュ自身、ほとんど覚えていなかったし悲しくもなかった。

 

しかし、母のように強くなろうと思ったことを記憶していた。

 

 

 

変換者を倒すために。

 

 

 

私死ぬんだ…。

 

お母様…。私、変換者を倒す前に、盗賊に殺されてしまいそうです。

ルートゥス様…。私の言葉は届いていますか?

私の名は国にあります。どうか、私の魂を名に宿らせてください。

 

心の中での最後の祈り。

涙が流れた。

 

 

土と血が混ざった味はまずかった。

 

 

 

後ろでは、次は腕をきるか、足を切るかでもめている声。

 

 

 

「まぁいいやぁ〜、歩けないといろいろ困るから次は腕いきまーす!!」

 

 

国を…守りたかった…。

 

パニッシュは目を閉じた。

 

 

 

 

“雷よ、おまえが落ちる場所はあの男だ!!”

 

 

 

ピカッ

 

雷が当たりを照らした。

<<<     >>>