16
シンはどうしようか、迷っていた。
泣いている。
女の子が泣いていた。
実は2人とも、パニッシュよりも先に目覚めていて、朝ご飯をとりにいっていた。
そして、シンが先に帰ってきて、泣いているパニッシュとでくわした、というわけだ。
ど、どうする…。
確かに昨夜、あんなことがあれば、一人の女の子なら誰でも泣きたくなる。
しかし、何故女の子がこんな森に一人でいたのか、
仲間とはぐれたのか…。
い、いや。今は推察している場合じゃない。
くそ、こういうのは、リチャードの方がなれているのに、どうして帰ってこないんだ。
当たりをニ三度見渡すが、リチャードが帰ってくる様子はない。
こういうときはどうすればいい…。
まて、この心境昔どこかで…。
シンの脳裏に幼い頃の情景が横切った。
まだ、シンが幼い時だった。
目の前で大の大人が泣いている。
シンはどうすればいいのかわからなかった。
“…”
“なに黙ってみてるのよ。”
彼女がシンを睨みつけた。
涙で塗れたその表情なのに、シンは綺麗だと思った。
“…”
“あのねぇ!!こういう時女の子は慰めてもらいたいのよ!!”
慰める?
慰めるってなんだ?
シンに怒鳴る風は、元気がないようには見えなかったが、彼女は泣いていた。
「なんで…泣いてるの?」
ようやく見つけた一つの言葉。
昔から不器用な彼なりのだした言葉。
彼女はシンを見つめた。
「悲しいから」
そういって彼女は再び泣き始めた。
まだ、小さな体な彼女だったか、その彼女よりももっと小さなシンが彼女の隣にちょこんと座った。
「そっか。悲しいから泣いているんだね」
今まで憎しみでしか泣いたことがなかったシンにとって
泣く意味を少しだけ理解した気がした。
シンは無意識に前へ踏みでていた。
ガサッ
草と草が重なりあい、目の前にいる彼女がシンに気がついた。
2人の視線がまじり合った。
シンの中で、記憶を過った彼女と今の彼女が一瞬重なって見えた。
「悲しいんだね」
その言葉は、パニッシュの心の奥底まで貫くものだった。
そうだ、自分は悲しいんだ…。
決して泣き止むわけではなかったが、暖かい言葉だった。
シンはパニッシュの隣に座った。
彼女はまだ泣いていた。
シンは、葉の間から漏れ出した朝の光を見つめていた。