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シンはどうしようか、迷っていた。

 

 

泣いている。

 

 

女の子が泣いていた。

 

 

実は2人とも、パニッシュよりも先に目覚めていて、朝ご飯をとりにいっていた。

そして、シンが先に帰ってきて、泣いているパニッシュとでくわした、というわけだ。

 

 

ど、どうする…。

 

 

確かに昨夜、あんなことがあれば、一人の女の子なら誰でも泣きたくなる。

しかし、何故女の子がこんな森に一人でいたのか、

仲間とはぐれたのか…。

 

 

い、いや。今は推察している場合じゃない。

くそ、こういうのは、リチャードの方がなれているのに、どうして帰ってこないんだ。

 

 

当たりをニ三度見渡すが、リチャードが帰ってくる様子はない。

 

 

こういうときはどうすればいい…。

 

 

まて、この心境昔どこかで…。

 

 

シンの脳裏に幼い頃の情景が横切った。

 

 

まだ、シンが幼い時だった。

目の前で大の大人が泣いている。

シンはどうすればいいのかわからなかった。

“…”

 

“なに黙ってみてるのよ。”

 

彼女がシンを睨みつけた。

涙で塗れたその表情なのに、シンは綺麗だと思った。

 

“…”

 

“あのねぇ!!こういう時女の子は慰めてもらいたいのよ!!”

 

慰める?

 

 

慰めるってなんだ?

 

 

シンに怒鳴る風は、元気がないようには見えなかったが、彼女は泣いていた。

 

 

「なんで…泣いてるの?」

 

 

ようやく見つけた一つの言葉。

昔から不器用な彼なりのだした言葉。

 

 

彼女はシンを見つめた。

 

「悲しいから」

 

 

そういって彼女は再び泣き始めた。

 

 

まだ、小さな体な彼女だったか、その彼女よりももっと小さなシンが彼女の隣にちょこんと座った。

 

 

「そっか。悲しいから泣いているんだね」

 

 

今まで憎しみでしか泣いたことがなかったシンにとって

泣く意味を少しだけ理解した気がした。

 

 

 

 

シンは無意識に前へ踏みでていた。

 

ガサッ

 

草と草が重なりあい、目の前にいる彼女がシンに気がついた。

 

 

2人の視線がまじり合った。

 

 

シンの中で、記憶を過った彼女と今の彼女が一瞬重なって見えた。

 

 

「悲しいんだね」

 

 

その言葉は、パニッシュの心の奥底まで貫くものだった。

 

 

そうだ、自分は悲しいんだ…。

 

 

決して泣き止むわけではなかったが、暖かい言葉だった。

 

 

シンはパニッシュの隣に座った。

 

彼女はまだ泣いていた。

 

シンは、葉の間から漏れ出した朝の光を見つめていた。

 




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