17
「とりあえず、これで体を拭いて。
で、上着はこれ貸すから」
てきぱきと進めていくリチャード。
パニッシュの傷の手当てをしたのもリチャード。
シンはそれをぼーっと見ているだけであった。
「じゃ、俺ら水くんでくるから。」
シンは以前としてパニッシュのことを見ている。
パニッシュはどうしようか、困った表情でリチャードの方を見た。
「いてっ」
「なにやってるんだよ。おまえもいくんだよ」
「え、あ、あぁ」
リチャードに引っ張られるように、シンはその場から離れた。
「帰ってきたとき、本当にびっくりしたんだからな。」
「いや、俺が泣かせたわけじゃないし…。」
リチャードが帰ってくると、そこには泣きじゃくっているパニッシュと
なにをするわけでもないシンが隣に座っていた。
なにがどうなってこの状況になったのか、イマイチ理解できなかった。
しかし、食事をしたり、手当てをしたりしているあいだに、ようやくパニッシュは落ち着きを取り戻し、今に至るわけだ。
「まぁ、そのことはいいとして。」
「彼女をどうするか、だな。」
パニッシュは今まで彼らの前で一言もしゃべっていない。
シンはパニッシュの泣いている姿を思い出した。
ほっておけない気持ちもあったが、自分達は旅をするもの。
「ここで一人にするわけにはいかないが、次の町で誰かに保護してもらうんだな。」
「そうだな」
リチャードはただ一言そういい、そのあと2人は無言だった。
しばらく歩くと、木が茂っている場所とは違った、開けている場所にでた。
そこの真中には雨水がたまった鉄製の箱が二つ。
昨日二つおいておいて正解だったな。
シンが安心して箱のうちの一つをとろうとすると、リチャードが声をかけてきた。
「それにしても…」
「ん?」
「彼女はいったいなにものなんだろうな」
リチャードが箱を持ったのを確認すると、シンは歩きはじめた。
「俺もそれは思ってたよ。」
「普通に考えて、不自然すぎる女性があんな夜中に馬に乗ってどこへいく?」
馬と聞いて、シンは不思議に思った。
「彼女馬に乗っていたのか。馬はどうなったんだ?」
「だめだったよ。足を打たれていた。」
シンはこのことを彼女にいったらまた悲しむだろうな、と思った。
何も返事をしないシンに、一応供養しておいたがな、とリチャードが付け加えた。