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ガタン、と荷台が大きく揺れて、シンと彼女はバランスを崩した。

起きあがった先には、馬に乗った2人の男。

 

腰には剣、銀の甲冑をきていて、明らかにどこかの国の兵だということがわかった。

どこの国なのかは、わからない。

 

「なにかようですか?」

 

リチャードが尋ねた。その声は不機嫌そうである。

 

「旅の途中、失礼。

このあたりで、女性に出会わなかったか?」

シンとリチャードの頭にはすぐに彼女のことが思い浮かんだ。

 

 

「それは、いい時に私達にききましたね。

昨夜、一人の女性を拾ったんですよ」

 

リチャードの口元には笑みがうっすら浮かんでいた。

シンもそれなりに、彼女の引渡し先がわかったので安心だった。

 

「それは本当か???」

2人の兵はずいぶんと慌てているようで、馬をもう一歩こちらへよせた。

兵が兜を脱ごうとしたとき、シンは我が目を疑った。

 

 

あの紋章は…!!

 

 

 

彼らの手袋には、六角の中に十字の印と赤いバラ。

 

 

忘れもしない。

ウェルヴェスの戦いに参加したあのアヴェルスト王国を。

 

王国の兵が探す女性。

 

そんなもの、王族の誰かしかいない。

 

 

リチャードの話によれば彼女も王族。

 

 

 

まさか、彼女は…!!

 

シンは彼女を凝視した。

 

 

 

 

「そちらの彼女です。」

 

 

「…スミマセンが、フードをはずしてもらえますか?」

彼女は、黙ったまま、そっとフードをとり、兵の方を向いた。

 

「…」

歓喜で飛びつくだろうか、と予想していたリチャードにとって

彼らの反応は意外なものだった。

 

「どうかしました?」

 

「いえ…。我々がさがしていたのは、髪が長い女性であるので。」

 

彼女の髪はショート。

兵は困惑している。

 

「…」

「…」

「…」

 

 

「スミマセンが…。」

全員が彼女の方に注目した。

 

「私はあなた達のこと、知りません」

 

 

その言葉にシンは不自然さを感じ取った。



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