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どうやらこの街は市場で栄えているようだった。
警戒もなく、リチャードが『ベネディクト団』だといったら、すんなりいれてもらえた。
お昼の市場がちょうど終わった頃で、人が市場のある中心から散っていく。
ざわめいた、通りの中で3人はあゆみを止めた。
「あの…私もうここで大丈夫です。」
パニッシュ・ローランは荷台から降りた。
「大丈夫なのか?」
リチャードが一応尋ねる。
何も言わずにコクンと頷いたパニッシュを見て、シンがいった。
「昼ぐらい一緒に食べたらいいんじゃないのか?」
シン!!
リチャードの殺気だった視線。
「あの…本当にもう大丈夫なんで…」
申し訳なさそうに言うパニッシュの言葉が2人の会話のない争いは急速に鎮火させた。
「ありがとうございました。」
礼儀正しくお辞儀をするパニッシュ。
リチャードが役所に行くことを勧め、パニッシュとシン、リチャードはそこで別れた。
「おじさん、この肉を4人前やいてくれ!!」
「おいおい、昼間からそんなに食べるのかい?」
「夜の分だよ。夜には街をでて次の国へ行くんだ。だから帰りにパンと水4日ぶん頼むよ」
「あいよ。あんたら、旅になれているようだから心配ないと思うが、
最近クタベラーが多いらしい。気をつけたほうがいいよ」
マスターの忠告に、シンとリチャードは昨晩の盗賊が頭をよぎった。
ケルン街某所
華のない男だけのおそい昼食をとろうとしていた。
肉の香ばしい匂いが漂う中、リチャードは何日振りかもわからないくらいいとおしかった肉にがっついていた。
「なぁ。リチャード。」
「あん?」
見ると、シンの皿はまだ一人前の半分しか進んでいない。
「お願いがあるんだ。」
リチャードは、半分を残して、口の周りを上品に拭いた。
「どうせ、パニッシュ・ローランのことだろ?」
「…」
図星である。
「お前も朝、了承したじゃねーか」
「気が変わったんだ!!頼むよ!!パニッシュをつれていって、俺達で探してやろう」
「い・や・だ!!!!」
急に態度を変えるなんて、何かあったな。
「俺の肉残りやるからさ。」
「そんなに食べれねーよ。っていうか、旅の目的を忘れたのか?」
ぐいと詰め寄るリチャード。
それを言われてしまえば、どうしようもなかった。
「俺は食事をしたら自分の仕事をしてくる。
お前は、旅の道具そろえておけ。
お前が“自分のこと”をしたいんだったら、やることやってからやるんだな。
いいな?彼女のことは一切忘れるんだ。」
グサッ
リチャードは残りの半分の肉を勢い良くフォークで突き刺した。