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25

 

夕刻の時間は、再び市場が騒ぎ出す。

 

 

パニッシュはようやく、人づてで役所に辿りついた。

役所の男性に、この街はわかりにくいと愚痴を零すと

そんなに大きな街ではないんですが…と苦笑された。

 

 

「馬はどこでもらえますか?」

 

う、うま???この娘はなにをいっているんだ??もらうって…おいおい…

 

「私、これからネシリア王国へいきたいんです」

 

これからって夜だよな???馬に乗るのはこの娘か??

 

「連れの人は??」

 

「私一人なんですがなにか…?」

 

女性一人!?しかもまだ大人年にもなっていないような娘が…???

 

突拍子もない発言に彼はたじたじだった。

 

「う、馬はとりあえず宝石がないと買えないよ?

ネシリア王国に行くには4日ぐらいかかるから、食料は買ったかい?

あと、女の子が一人で夜に行くには危なすぎる。最近クタベラーが多いからね」

事務的口調での説明はとてもわかりやすかったが、聞いたことのない単語も混ざっていた。

「クタベラー…ですか?」

 

クタベラーを知らない!?

 

本当は呆れてモノもいえないといいたいところだったが、仕事柄それはできない。

 

「クタベラーっていうのは、変換者と手を結んだ人間の集団のことだよ」

 

「え?」

 

パニッシュは驚いた。

人間は全て変換者を憎んでいると思っていたからだ。

 

「たいていは、盗賊とか殺し屋とか様々さ。具体的な一つの軍団ではなくて、まとまりがないから対処しにくいのが現状でね。おまけに変換者とつるんでいるからこれがまた厄介なんだ。」

 

盗賊…。

昨日の盗賊はクタベラーだったのかしら。

人間と返還社が手を結ぶなんて…。

でもあの変換者とは仲間じゃないみたいだし…。

そういえば、昨日の盗賊はあのあとどうなったのかしら。

 

 

「大丈夫ですか?顔色があまりよくないようですが…」

 

「え?大丈夫です。

あの、宝石なんですが…」

 

バラバラバラ

 

昨夜盗賊に渡した余りはそんなに残っていなかった。

 

「これだけあれば足りますか??」

 

 

「…!!!!た、足りるもなにもこれだけあったら馬が10頭以上買えますよ」

 

それを聞くと、パニッシュはにっこり笑った。

その笑顔は、まるで天使のようにかわいらしい。

「ありがとう」

 

そういって、パニッシュはでていった。

 

 

「い、いったいあの娘は何者だ…?」

 

さきほどの微笑みに動かされた心の鼓動が高まりつつ、驚きもすぐにはとまりそうもなかった。